草野心平さんは、「蛙の詩人」として知られています。
富士山や海や天体、人間や植物など、ありとあらゆるテーマで詩を書きましたが、やはりその中心は「蛙」でしょう。
その草野心平さんが、蛙の目線に立って書いた、「青イ花」という詩を紹介します。
青イ花
トテモキレイナ花。
イッパイデス。
イイニホヒ。イッパイ。
オモイクラヰ。
オ母サン。
ボク。
カヘリマセン。
沼ノ水口ノ。
アスコノオモダカノネモトカラ。
ボク。トンダラ。
ヘビノ眼ヒカッタ。
ボクソレカラ。
忘レチャッタ。
オ母サン。
サヨナラ。
大キナ青イ花モエテマス。
注)オモダカ:水田や湿地、ため池などに自生する水生植物。生長すると矢尻形をした葉をつけ、三枚の花弁がある白い花を咲かせる。
草野心平「青イ花」~鑑賞・解説~
想像力をかきたてる詩
「ボク」という主語から、主人公が少年の蛙だということが分かりますね。
カタカナで表記されていることで、少年特有の舌足らずで甲高い声が想像しやすいです。
ある日、蛙が水草のオモダカの根本から跳んだとき、蛇の目が光って、そこから続きは詳しく語られていません。
あえて言葉にしないことで、かえって読む人の想像力をかきたてて、涙腺をゆるませます。
そう、草野心平さんの詩は、思わず泣けてくる詩が多いのです。
命の本質を思い出させる詩
時々、テレビ番組や写真などで、生物が捕食するさまを目にすることがあります。
あまりの生々しさに、思わず顔をそむけたくこともありますが、弱肉強食は現在進行形で繰り返されている事実です。いまも地球のどこかで、食物連鎖がつながっています。
人間は肉や魚を食べることはあっても、食べられることがないため、その現実を忘れてしまいがちです。
「青イ花」の詩は、人間のように客観的でなく、蛙のように主観的になって語られているため、命の本質をハッと思い出させてくれます。
コメント
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良い詩ですね
良い詩ですね
いい詩やな~
めちゃいい詩やな
めちゃいい詩やね