当ブログでは2021年4月から毎月1編ずつ、その月にちなんだ詩を紹介してきました。12回目の今回は最終回。私が毎年3月になると思い出す詩……谷川俊太郎さんの『言葉』について触れてみます。
言葉
何もかも失って
言葉まで失ったが
言葉は壊れなかった
流されなかった
ひとりひとりの心の底で言葉は発芽する
瓦礫の下の大地から
昔ながらの訛り
走り書きの文字
途切れがちな意味言い古された言葉が
苦しみゆえに甦る
哀しいゆえに深まる
新たな意味へと
沈黙に裏打ちされて
私が毎年3月になると思い出す詩……と、冒頭に書きましたが、『言葉』は朝日新聞の2011年5月2日夕刊において発表されたものです。谷川俊太郎さんは同新聞で毎月1篇、詩の連載をしています。そういう意味では、『言葉』は本来なら5月の詩と言えそうです。
じゃあ、なぜ3月に当ブログでこの詩を紹介しているのか?私が東日本大震災から暫くしてこの詩に触れて、とても励まされたのを記憶しているからです。
谷川俊太郎さん自身は、震災をテーマとした詩を書いたことがないと語っています。
震災後、直接的に『311』を主題とする詩は書いていない。被災者じゃないからリアリティーがないという気がして書きたくなかった
谷川俊太郎さんインタビュー 朝日新聞:2012年3月5日掲載
それでも、谷川俊太郎さんが3.11を経験した後、潜在意識から滲み出てきたのが、この『言葉』なのではないでしょうか。
この詩に余計な解説は付けたくありません。
3.11から10年以上経った今も、私の心にひっそりと生き続けている詩です。
3月におすすめの詩
室生犀星は3月に亡くなられました。犀星の出身地である金沢は、3月でも雪が降りしきっています。上記の記事において、犀星の詩『三月』を紹介しているので、もしよかったらご覧くださいね。
金子みすゞさんも3月に亡くなられています。もっと長生きされていたら、もっと多くの童謡を生み出していただろうと思うと、悔やまれてなりません。上記の記事では、春のはじめにぴったりな花の詩を取り上げています。
誕生日・忌日一覧(3月)
※青文字の氏名をクリック(タップ)すると、その詩人の作品一覧を見ることができます。
誕生日
高村光太郎 1883年(明治16年)3月13日 -1956年(昭和31年)4月2日
忌日
室生犀星 1889年(明治22年)8月1日 -1962年(昭和37年)3月26日
堀口大学 1892年(明治25年)1月8日 -1981年(昭和56年)3月15日
金子みすゞ 1903年(明治36年)4月11日 -1930年(昭和5年)3月10日
立原道造 1914年(大正3年)7月30日 -1939年(昭和14年)3月29日
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