八木重吉の「太陽」という詩を紹介いたします。全文引用しますね。
太陽
太陽をひとつふところへいれていたい
てのひらへのせてみたり
ころがしてみたり
腹がたったら投げつけたりしたい
まるくなって
あかくなって落ちてゆくのをみていたら
太陽がひとつほしくなった
八木重吉「太陽」
「あれ?もう引用終わりですか?」という声が聞こえそうですが、はい、以上です。
八木重吉の詩は、短いながらも、いつまでも心に残る詩が多いです。
太陽は心の表れ
「太陽をひとつふところへいれていたい」と、作者の八木重吉は言います。
この一言だけでもハッとさせられるのですが、続けてこんな言葉が。
てのひらへのせてみたり
ころがしてみたり
腹がたったら投げつけたりしたい
太陽がまるで生きているボールのよう。八木重吉の気持ちの表れにもみえます。
いちばんドキリとさせられるのは、何と言っても「腹がたったら投げつけたりしたい」のひとこと。
むしゃくしゃしている心をぶつけたい、ぶつける場所がほしい。そんな初々しくて柔らかな本音が、むき出しになっています。
太陽をいとおしむ思い
「あかくなって落ちてゆく」のは太陽でしょうか。
おそらく沈む夕日をながめているのでしょう。朝日のように光を強めるのでなく、昼の太陽のように照りつけるのでなく、まるくなって優しくなる夕日。
私だったら朝日や昼の太陽を、あまり懐に入れたくないです。だって火傷しそう(笑)
夕日だからこそ、手のひらへ乗せたり、転がしたりしたいです。
夕日は地平線の向こうへ沈んでしまいます。いつまでも太陽をいとおしむ思いから、この詩が生まれてきたのかもしれませんね。
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