高田敏子さんの「夕焼け」という詩を紹介します。
短い詩ですが、そこには平和への深い祈りがこめられています。
夕焼け
夕焼けは
ばら色
世界が平和なら
どこの国から見ても
どこの町から見ても
夕焼けは
ばら色夕焼けが
火の色に
血の色に
見えることなど
ありませんように。
高田敏子「夕焼け」~鑑賞・解説~
夕焼けが火や血に見える戦争
もし自分の大切な家族や友人が、遠い戦地に身を置いていたなら。
夕焼けを美しいと感じることなく、地平線の向こうで広がる戦火や流血を思い起こすのではないのでしょうか。魂が引き裂かれるような悲しみに襲われるかもしれません。
今の日本は問題を抱えつつも平和ですが、数十年前はそのような悲しみを抱えている人が大勢いました。
日本の空にも戦闘機が飛んでいたので、空を仰ぐ余裕すらなかったはずです。
作者は海外で戦争を体験
「夕焼け」の作者である高田敏子さんは、1914(大正3)年生まれ。1930~40年代は、商社勤務の夫に従って、日本、満州、台湾と移動していました。
海外で戦争を体験しているため、海外を背景とした反戦の詩をいくつも残しています。
日本の外を見て回って、視野を広げたことが、「夕焼け」の詩にも生かされています。
世界が平和なら
どこの国から見ても
どこの町から見ても
夕焼けは
ばら色
満州や台湾で現地の人たちと親しんで生活していたからこそ、「どこの国」「どこの町」という言葉に実感がこもっています。
夕焼けがばら色に見える平和を願って
今もなお、世界では紛争が続いている国もあります。
なので私は日本にいても、夕焼けが火や血の色に見えることがあります。
遠い国のことであっても、決して他人事ではありません。
高田敏子さんのように、世界中に友達がいるという視点を誰もが培うことができたら、戦争も収まるのではないかと思います。
「どこの国」「どこの町」でも、夕焼けがばら色に見える平和が満ちあふれるといいです。
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