北原白秋の「初恋」を紹介します。さっそく引用しますね。
薄らあかりにあかあかと
踊るその子はただひとり。
薄らあかりに涙して
消ゆるその子もただひとり。
薄らあかりに、おもひでに、
踊るそのひと、そのひとり。
北原白秋「初恋」~鑑賞・解説~
北原白秋の初恋
北原白秋の「初恋」は、詩集『思ひ出』に掲載されています。
『思い出』は、白秋の幼少期の記憶が、みずみずしく感覚的な言葉で綴られています。
故郷・水郷の柳河では、お祭りになると町のわかい娘たちが、奇麗な踊り小屋を作って踊ったそうです。
初恋が芽生えたのも、そんなお祭りの時でした。
美くしい小さな Gonshan. 忘れもせぬ七歳の日の水祭に初めてその兒を見てからといふものは私の羞耻に滿ちた幼い心臟は紅玉入の小さな時計でも懷中に匿してゐるやうに何時となく幽かに顫へ初めた。
引用元:『思ひ出』より「わが生ひたち」
Gonshanは、柳河方言で「良家の娘」「お嬢さん」の意味。
たったひとりの女の子が、まるで照明を浴びているかのように、心に焼き付いて離れない様子が描かれれていています。
ささやかながら、切々としていて、瑞々しい詩。
初恋そのもののような、魅力にあふれています。
NHK連続テレビ小説「エール」に登場
さて、9月15日の今朝、NHK連続テレビ小説「エール」を観ていたら、この詩が目に飛び込んできたので驚きました。
「エール」と言えば、昭和に活躍した作曲家・古山裕一(窪田正孝さん)と、歌手志望の妻・音(二階堂ふみさん)の物語。
その裕一の元に、五郎(岡部大さん)が弟子入りして、居候することになりました。
ある日、裕一が見守るなか、五郎が作曲しようと五線譜に向かっている傍らに、この詩が鉛筆で書かれた紙が置かれていました。
ほんの一瞬の場面でしたが、お気づきになった方いらっしゃいますでしょうか……?
音の妹・梅(森七菜さん)も、時同じくして古山家に住むことに。
五郎と梅の、初めての恋を匂わせるような詩ですね。何気ないところに伏線を張っていて、心にくい演出だなと感心してしまいました。
「初恋」が出てきたのが嬉しかったので、思わず詩を紹介してしまいました。
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