金子みすゞさんの、七夕にまつわる詩を2篇紹介します。
七夕というと、7月7日の夜に行う星祭。端午(5月5日)や重陽(9月9日)と同じように、節句のひとつです。
日本の新暦ですと、その日はちょうど梅雨の最中で、なかなか天の川を仰ぐことができませんね。
ところが本来、七夕は旧暦で行われていました。旧暦7月7日を新暦に当てはめると、毎年日付は異なりますが、大体8月頃になります。
さて、前置きが長くなりましたが、みすゞさんの「七夕のころ」と「七夕の笹」を引用します。
金子みすゞ「七夕のころ」「七夕の笹」
七夕のころ
風が吹き吹き笹藪の
笹のささやきききました。伸びても、伸びても、まだ遠い、
夜の星ぞら、天の川、
いつになったら、届こうか。風が吹き吹き外海の、
波のなげきをききました。もう七夕もすんだのか、
天の川ともおわかれか。さっき通って行ったのは、
五色きれいなたんざくの、
さめてさみしい、笹の枝。
「七夕のころ」は、音の重なりが心地よい詩ですね。声に出して味わいたいです。
「ささのささやきききました」は、「さ」と「き」の音が、「なみのなげきをききました」は、「な」と「き」の音が、それぞれ重なっています。
他にも音が重なっているところが、いくつも見られます。
七夕の笹
みちを忘れた小雀が、
浜でみつけた子笹藪。五色きれいな短冊は
藪のまつりか、うれしいな。かさこそもぐった藪のなか、
すやすやねんね、そのうちに、
お宿は海へながれます。海にしずかな日が暮れりゃ、
きのうのままの天の川。やがてしらじら夜があけて、
海の最中で眼をさます、
かわい小雀、かなしかろ。
「七夕の笹」の詩も、音の響きがきれいです。
「かさこそ」「すやすや」「しらじら」と、オノマトペが生かされています。
詩の鑑賞と解説
「七夕のころ」と「七夕の笹」は、お祭りさわぎというよりも、お祭りのあとのさみしさを描いていますね。
みすゞさんの詩には、小さなものや、陰に隠れているもの、目に見えないものを、そっと掬い上げている作品が多いです。
「七夕のころ」と「七夕の笹」も、そんな優しい視点から生まれてきたのではと思います。
話は飛びますが、今の日本では12月24日から25日にはケーキが、2月3日には太巻が飛ぶように売れています。ところがその日を過ぎると、ケーキや太巻に誰も見向きもせず、大量に処分されてしまいます。
そんな現代の状況を目にしたら、みすゞさんはどう思うでしょう。飢えに苦しんでいる人たちを思って、悲しむに違いないです。
七夕の笹だって、七夕を過ぎたら人間に見捨てられるなんて、ちょっと切ないですよね。
日々を大切にていねいに過ごしたいと、みすゞさんの詩から学んだ思いです。
コメント
とても凄いですね。