金子みすゞさんの詩で、お正月にまつわる詩を2篇紹介します。
お正月は一般的に晴れやかなイメージがありますが、なかには密かに寂しさを抱えている人もいるかもしれません。そんな人の心にそっと寄り添うような、優しい詩です。
お正月と月
お正月と月
お月さん、
なぜやせる。かど松の
松の葉のよに
なぜ細る、お正月くるに。
みすゞさんが生きた時代はすでに新暦で、月の満ち欠けが直接暦にはかかわっていません。
それでも私はこの詩を読んでいると、不思議と旧暦のお正月を連想します。だんだんとやせ細って、まさに新月になろうとしている月が、まぶたに浮かぶようです。
夢売り
夢売り
年のはじめに
夢売りは、
よい初夢を
売りにくる。たからの船に
山のよう、
よい初夢を
積んでくる。そしてやさしい
夢売りは、
夢の買えない
うら町の、
さびしい子等の
ところへも、
だまって夢を
おいてゆく。
初夢は一般的に、元日から2日にかけてみる夢です。
「一富士、二鷹、三茄子」に代表されるような、縁起の良い夢を見れば、その年はめでたい年になると言われています。「それならいい夢を!」と望むのが人の常ですが、お金を積んだとしても、夢は自在に見られるものではないですよね。
ところが、誰もが願っても見られるとは限らない吉夢を、やさしい夢売りはさびしい子等にそっとおいていきます。
この子どもたちの一年が、ほんとうの意味で豊かになりますように…と、私はこの詩を読むと思います。
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