【8月の詩】伊東静雄「八月の石にすがりて」

当ブログでは毎月1編ずつ、その月にちなんだ詩を紹介する予定です。

8月の今回は、伊東静雄「八月の石にすがりて」です。

八月の石にすがりて

八月の石にすがりて
さち多き蝶ぞ、いま、息たゆる。
わが運命さだめを知りしのち、
たれかよくこの烈しき
夏の陽光のなかに生きむ。

運命さだめ? さなり、
あゝわれらみづか孤寂こせきなる発光体なり!
白き外部世界なり。

見よや、太陽はかしこに
わづかにおのれがためにこそ
深く、美しき木蔭をつくれ。
われも亦、

雪原せつげんに倒れふし、飢ゑにかげりて
青みし狼の目を、
しばし夢みむ。

伊東静雄(1906-1953年)は、長崎出身の詩人。大阪で教師をしながら、詩作を続けました。

南国の眩い光と濃い蔭を浴びて育ったからでしょうか。夏の詩が多いのが特徴です。

「八月の石にすがりて」は、第二詩集「夏花」(1940年)に収められています。

夏というと、森羅万象が命を燃やして輝いている姿が想像できますが、命はいつかは灰と化すのですね。生は死を孕んでいるものです。

生と死と、光と蔭が、鮮やかに描かれている詩です。

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誕生日・忌日一覧(8月)

※青文字の氏名をクリック(タップ)すると、その詩人の作品一覧を見ることができます。

誕生日

  • 室生犀星 1889年(明治22年)8月1日-1962年(昭和37年)3月26日
  • 宮沢賢治 1896年(明治29年)8月27日-1933年(昭和8年)9月21日
  • 三好達治  1900年(明治33年)8月23日-1964年(昭和39年)4月5日

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