萩原朔太郎の「天景」が好きで、時々口ずさむことがあります。リズムが心地よく、イメージも豊かなので、ついつい歌いたくなる詩なんですよね。
さっそく紹介しますね。
天景
しづかにきしれ四輪馬車、
ほのかに海はあかるみて、
麦は遠きにながれたり、
しづかにきしれ四輪馬車。
光る魚鳥の天景を、
また窓青き建築を、
しづかにきしれ四輪馬車。
※「天景」は「地上巡礼」1914(大正3)年11月号に発表。第一詩集『月に吠える』に所収。萩原朔太郎の初期の作品です。
萩原朔太郎「天景」~鑑賞・解説~
「天景」のリズム
「天景」では「しづかにきしれ四輪馬車」という詩句が、最初と真ん中と最後で、3回繰り返されているのにお気づきでしょうか。この反復が心地良いです。
そしてこの詩句も、
「しずかにきしれしりんばしゃ」
と、「し」の音で4回押韻して、馬車の車輪のきしみを感じさせます。
全体的に七五調で、リズミカルです。
最初と最後が同じ詩句でつながりがあるため、まるで永遠に回転し続けるかのような詩ですね。
「天景」のイメージ
「天景」はおそらく萩原朔太郎の造語です。空中の幻影風景を描いているのでしょうか。
- あかるい海
- 遠くに流れる麦(畑)
- 光る魚鳥
- 窓が青い建築
一見何のつながりがないイメージを、流れるように重ね合わせているのは素晴らしいですね。
私はこの光景を想像するたびに、うっとりします。もし絵心があれば、描いてみたい世界です。いや、絵よりもむしろ、映像でしょうか。
たとえば現代のミュージックビデオでも、意外な映像が次々とつながっていって、それが不思議と気持ちいいことがありますよね。「天景」の詩は、まさにその先駆けと言えそうです。
ロマンティックで、ノスタルジックな詩です。
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