当ブログでは毎月1編ずつ、その月にちなんだ詩を紹介する予定です。
11月の今回は、萩原朔太郎の「殺人事件」です。
(毎月紹介している他の詩と比べると、タイトルが少し物騒な感じがするでしょうか?推理小説のような味わいのある詩なので、もしよかったらお付き合いくださいね)
殺人事件
とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍体のうへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。しもつき上旬のある朝、
探偵は玻璃の衣裳をきて、
街の十字巷路を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひをかんず。みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者はいつさんにすべつてゆく。
萩原朔太郎が生まれたのは、1886年(明治19年)11月1日。
そう、この記事を更新している今月が、まさに誕生月です。「朔太郎」という名前は、朔日(ついたち)生まれであることから、命名されました。
さて、この「殺人事件」は、彼にとって最初の口語詩です。
(この詩を発表したのは「地上巡礼」大正3年9月号で、「一九一四・八・一二」と末尾に付記されています)
萩原朔太郎は、口語自由詩を確立した詩人として知られていますが、この「殺人事件」から端を発しているのですね。
11月におすすめの詩
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」は、彼の遺品である手帳のメモ書きから発見されたことは、御存知でしょうか?
そのメモ書きには「11.3」と付記されています。おそらく11月3日に書かれたのでしょうね。
誕生日・忌日一覧(11月)
※青文字の氏名をクリック(タップ)すると、その詩人の作品一覧を見ることができます。
誕生日
萩原朔太郎 1886年(明治19年)11月1日-1942年(昭和17年)5月11日
忌日
北原白秋 1885年(明治18年)1月25日-1942年(昭和17年)11月2日
草野心平 1903年(明治36年)5月12日-1988年(昭和63年)11月12日
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